・私は大学時代、サイクリング部に所属していました。サイクリング部が使う自転車は一般の自転車と異なり、高価なものを取り扱う場合が多いです。理由は高い自転車ほど素材が軽くて速く走れるとか、耐久性が頑丈だとか、そう言った理由によるものです。自転車1台に数十万円しますので、一生懸命バイトしてためたお金でようやく自転車に跨ることができるという栄光(?)を手にすることが出来るわけです。お金が無い中でなんとかやりくりして大好きな自転車を乗り回していた、そんな大学時代に起こった出来事です。
・当事者は私ではなく、私よりも自転車愛の強い友人のN君です。ずぼらな性格の私とは違い、自転車に対して一切手抜かりの無いN君は、その熱烈な情熱で、非常に高額の投資をして自分の自転車をメンテナンスしていました。自転車の素材なんかも、比較的安価なアルミのフレームで満足していた私と比べ、値段の何倍もするカーボンフレームを装着していたりと、とにかく自転車に対する愛が強いN君でした。しかし、運命というのは残酷なもので、普段からクラブ員の誰よりも自転車に愛情を注いで大事にしているN君に限って、交通事故に巻き込まれてしまうんですね、本当に皮肉なことだと思うのですが…。
・事案の概要自体は簡単なもので、N君(自転車)と自動車の接触事故だったですが…。結論から言うと、『自転車の弁償代が高額だった』ために事故の解決には長期戦を強いられてしまいます。相手(自動車の運転手)はただの自転車との軽い接触事故(幸いN君にも大事は無かった)と思っておられたようですが、壊れてしまった自転車の値段が自身の認識の遥か上をいく金額だった様で、たかだか自転車に数十万円もの弁償額を払えないと言われたそうです。それを受けたN君、悔しくってしょうがなかったんでしょう、親などと相談して弁護士を付けることにし、何と【簡易裁判】まで提起したそうです。
・結局は簡易裁判により決着し、お互いが譲歩する方向で話はおさまったようです。確かにN君は自転車がとても好きで、何十万もする装備を備えていたので裁判までする気はわからなくもないですが、同時に「何で自転車に何十万円も払わなければいけないんだ」という相手方の気持ちもわかります。少なくとも、世間一般として、自転車にそれほどのお金がかかっているとは思わないでしょうから…。
というわけで、高級自転車にはご用心、もし事故を起こしたなら、相手への損害ばいしょうはもちろん、高い弁償代が付いてきます。